タンポポたちの攻防
ある日のこと、地元の広報をツラツラと見ていたら、こんな情報が載っていました。
在来種のタンポポを守るために在来種と外来種の分布調査をします
この感じ、何やら在来種のタンポポに危機が迫っているようなニオイがします。まるで、外来種の勢力に押されて、在来種の未来は絶滅に向かっているかのような。
「分布調査」とうたっていることから、その場で外来種を駆除するまではしないのかな。でも、日本固有のタンポポを守るぞ!という使命感のもと、外来種を厄介者扱いしているのが感じられます。
西洋タンポポ(外来種)は悪者か?
確かに、西洋タンポポ(外来種)は環境省指定の要注意外来生物で、日本の侵略的外来種ワースト100に選定されています。
言ってみれば、日本の生態系や私たちの生活への影響が大きいと懸念されている外来種です。タンポポで、私たちの生活が危ぶまれる?少し考えづらいですがともかく、西洋タンポポは要注意の扱いです。
なにしろ、西洋タンポポはアポミクシスです。アポミクシスって、花粉で受粉しなくても種子を作れるのです。周りに羽虫がいなくても、別のタンポポがなくても(花粉がなくても)増殖できるのです。
花が咲いている時期に、総苞片(①)が反り返っているのが外来種です。
おまけに、春だけでなくほぼ年中、花を咲かせることができます。そして、小さな種子をたくさん飛ばして、広範囲に広がっていきます。そんなわけだから、都会のコンクリートの隙間で咲いているタンポポは大抵、西洋タンポポ(外来種)だったりします。
うわぁ…、アポミクシスって、無敵な仕組みに感じます。そこにはやっぱり、日本侵略の意図が垣間見えるのですが…。(怖)
日本タンポポ(在来種)は、絶滅へ向かっているのか?
一方、在来種のタンポポは他殖です。他殖とは、同じ種でも自分のものではなない花粉がついて種子を作る流れです。だから、日本タンポポ(在来種)は群れて咲いて、羽虫に花粉を運んでもらい、種子をつけます。
花が咲いて、虫が飛んできて、受粉して、種ができる。あぁ、これこそ理科の授業で習った、わかりやすい流れ。
だからこそ、在来種は群れて咲く場所が確保できず、羽虫の少ない都会では増えることができません。でも、田舎でしっかり根を張り、生きています。また、春にしか花を咲かせないけれどその分、大きな種子をつけ、他の時期は(開花のためにエネルギーを使わず)力を蓄えています。
そうなんです。在来種は、日本の田舎でちゃんと生きています。私が住む宙ぶらりんに田舎な地域だと在来種も外来種も生きていて、更には交雑が進む、というわけでしょう。そう、アポミクシスと他殖でも交雑が起きているとのこと。で、冒頭の「タンポポ調査」が必要になるという流れでしょうか。
タンポポの分布から見えること
そもそもタンポポは、外来種のほうが強いとか優れているとかではなくて、外来種はアポミクシスという仕組みだから都会で生きることができます。反対に、田舎では他の植物との競争に負けてしまうのでしょう。
そして、在来種はもともと、日本の田舎で生きるのに適した形で強く生きています。そして種子を作りづらい都会は、生息地として選んでいません。ただし、日本の田舎が減ってきていることは、在来種が生きづらい状況ではあるのでしょうね。
これって、単に外来種分布の広がりを敵視するより、日本の田舎や自然が減ってきていること、そしてコンクリート砂漠が広がっていることを懸念したほうがいいのではないかな。そんなふうに感じるのでした。