香りと記憶がリンクする現象、プルースト効果
お店で出された料理の香辛料や、街ですれ違った人がつけていた香り…、それに気付いた瞬間、その香りにまつわる昔の記憶がよみがえったことって、ないですか?
これは、プルースト効果というそうです。フランスの文豪マルセル プルーストの小説「失われた時を求めて」にちなんで名づけられています。小説では、マドレーヌを紅茶に浸した際の香りをきっかけにして、幼い頃の記憶を思い出しています。
嗅覚は、脳の大脳辺縁系に直接つながっています。この大脳辺縁系は、原始的な感情を司っていて、本能行動や情動行動に関与しています。なので、嗅覚と情緒的な思い出は密接に関わっているのです。
私のプルースト効果
東京で仕事をしていた頃です。私はその仕事が好きでしたが、連日の残業で身体は疲労困ぱいでした。その日も夜遅くに仕事を終えて、帰宅しようとしていました。
その時です。疲れて、しょぼくれていた私がハッとしました 。
人ごみの中で誰かが、インドネシアの煙草「ガラム」を吸っていました。このクローブの香りは、すぐにわかります。(好きだから…)
それと共に、インドネシア・スマトラ島の風景が鮮やかによみがえりました。20代はじめ、バックパッカーを始めた頃の旅の思い出です。
強い日差し、まぶしい緑の田園、美しいサロン、マーケットの賑わい、島の人からの招待、そしてマラリヤ…。
いろいろなものを見て、感じて、自分の中に蓄えた旅でした。香りは、記憶と深く結びついていますね。次から次へと、思い出や感情が溢れ出てきました。
一通りの思い出に浸って、ふと我に返ると、そこは東京の雑踏の中でした。ほんのつかの間、私一人だけ、時空間を超えて、鮮やかな記憶の世界に飛んでいました。
多分、次に煙草「ガラム」の香りを嗅いだときも、同じように思い出がよみがえるのでしょう。それは何度でも…。
今時は、このインドネシアの煙草「ガラム」をモチーフにした、電子タバコのフレーバーが出ているんですね。煙草は吸わないのですが時々、この香りを懐かしく思います。
植物に関わる香りと記憶の話でした。お付き合いくださり、ありがとうございます。
南蛮煙管(ナンバンギセル)の思い出
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