5月後半、丑三つ時の様子
よい季節になりつつあります。…って、なんだか警戒した物言い。
そのワケは、手ごわい花粉症が完全に収まったわけではないせいです。未だ、寝起きに特大のくしゃみを連発している私です。
とはいえ、新緑の景色、冷房も暖房も必要ない気温、雨や台風がまだ少ないこと、蚊がまだ出ていないこと等々を考えれば、大かたの人にとって今がよい季節と言わずしてなんと言いましょう。
そんな、よい季節の今。ちょっとばかり夜更かししていた夜中2時過ぎ、ふとベランダのドアを開けてみました。澄んだ空気が部屋に流れ込み、気持ちがいいです。しかし、です。
草木も眠る静まりかえった時間…のはずが、この時季のこの時間は案外うるさかったことが判明しました。何の騒ぎかと言えば、カエルの声です。
そうなのです。この時季、田には水が張られて、田植えがスタートします。すると、そこにはカエルが集まってきます。カエルの鳴き声はいくつもいくつも重なって、まるで音が面となって鳴り響く感じ。
この無数のカエル。彼らはある晩、突如沸き起こったのかと言えばそんなワケもなく、オタマジャクシから急激に成長したのかと言えばそうでもなく。畑の土の中で冬眠していたカエルが、気温と水に呼ばれて目覚めたのだと思います。
実は、春先に畑を耕していると、土の中で眠るカエルと遭遇することがあります。彼らは冬の間、土の中で丸くなって眠っています。そんな時、畑を耕す者(それは、私です)がシャベルでもって、土ごとカエルを掘り起こすわけです。
いきなり明るい世界に放りだされたカエルは、それはそれは眠そうな顔をしています。まさに寝起き顔で頭も働かなくて、果たして今、自分に何が起こったのかなんて到底理解できず、半分夢の中でポ~ッとしています。
そんな姿を見ると、「いやぁ、悪いことしちゃったね、起こしちゃったねぇ」と半ば申し訳ない気持ちになり、結果、朦朧としているカエルに土をかぶせてやるわけです。
そのカエルたちが、田んぼに水が張られるやいなや、満を持して目覚めたというわけです。そして真夜中の大合唱を奏でるわけです。
草木も眠る丑三つ時、聞こえるカエルの大合唱というのは季節を感じる音。ちょっとばかり聞き入ってしまう、風情のあるものです。ただし、私は遠くから聞いています。